不良雑誌を焼く 赤坂少年母の会 子供を守るためにすでに五百冊処分 朝日新聞引用

1954年07月17日 (昭29)
京都府
子供たちの目に触れさせるなと不良出版物を各家庭から集めて焼きすてた母親たちのグループが、いま話題になっている。
東京都港区の赤坂少年母の会で、未成年者に悪い影響を与えるエロ、グロ雑誌を追放しようと会員三千人が結束、見ない、買わない、読まないの”三ない運動”を起し、まず私たちの身の回りからと立上ったのがさる五月の青少年保護育成運動の期間中だった。三十五冊焼いたのが手はじめだったが、以来会員たちの積極的な”供出”が続いて現在までにおよそ五百冊にのぼる雑誌、単行本が煙とともに処分された。
「古物屋や古本屋に売れば、また売られる恐れがある。悪い本とはいえ、焼くということは論議のまとになろうが、害あっても利のないこの種の本を当局が取締ってくれない以上、こういう自衛手段をとる以外に手はない。いわば子を守る母親の社会に対する怒りの爆発です」とは会長黒川算子さん(元厚相夫人)の話。
内閣の中央青少年問題協議会でも、専門委員を設けて近く本格的にこうした種類の不良出版物、映画の検討に乗出す計画だというが、以下本を焼いた赤坂少年母の会の行為を第三者はどうみるか。母親、評論家、取締当局といったそれぞれの立場の人の意見をきいてみよう。

母の愛の現れ 養老警視庁防犯部長の話
本を焼くということはよくよくのことで、子供を悪い社会環境から守ろうとする母親の愛情の現れたと思う。最近の調査によると、焼かれたこの種のきわどい雑誌は毎月二十六種余り、少く見積もってもざっと百万冊も発行されており、傾向としては次第に露骨で、写実的になってきている。しかも、こうしたもののしげきによって起る青少年の性犯罪は急ピッチでふえている現状だ。現に昨年一月からさる五月一ぱいまで防犯部の少年課が直接検挙した百二十八人の性犯罪者のうち、四五%に当る五十七人が直接これら不良雑誌の影響を受けていた。恐るべき現象というほかはない。
ところで、近ごろ一般的な風潮として青少年の性犯罪が住宅街に多くなってきたことが挙げられる。原因を調べてみると、家庭にあった本をみてまねしたというのが圧倒的に多く、われわれとしては不良雑誌の影響がいまあらゆる場所の青少年にしみこんでいることを如実に示しているものとして注目している。もちろん、この種のものの根絶を図ることは非常に難しいし現法規では取締りは限界点にきているが、警視庁としては重点的にやれる範囲のきびしい取締りを行うつもりだ。結論として赤坂母の会の行為には大いに共鳴を感じる次第だ。
(朝日新聞7.17夕刊)
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