暴力団の「鉄砲玉」少年 朝日新聞引用

1964年11月30日 (昭39)
岡山県
 全国的に少年暴力団員の検挙が目立つ。さる十月十一日、岡山東署に「本多会三代目木下会会長」と名乗る十六歳の少年が傷害でつかまった。全身に竜のいれずみをして、三十人の手下を従え、女を抱えるいっぱしの親分で、係官を驚ろかせた。
 これほどではないが、札幌では、暴力団の手先の十三歳の中学生三人、愛知ではピストルをつきつけて競馬の八百長レースを強要した十六歳の少年暴力団員、和歌山ではエロショーの手入れで五人のうち三人が少年など、暴力取り締まりでつかまる少年が多い。警察庁の昨年の調査でも、暴力団犯罪で検挙した五万一千人のうち、四分一以上の約一万三千九百人が青少年不良団のメンバー。
 とくに注目されるのは、少年が暴力団の前衛的存在として、抗争事件の計画的殺傷にいわば「鉄砲玉」として活躍していること。警察の取り締まりや世論の高まりにもかかわらず、一向に減る傾向がみられないのは、準構成員とも云うべき不良少年団が暴力団員の何倍かいて、それがいまもふえているからだという。暴力団も「鉄砲玉」になる二軍的な組織をつくるのに躍起。さる六月、松本市で出入り事件を起こした暴力団は、中学を出たばかりの組員に月三万円もの給料を与えていた。
 ともあれ、少年たちの暴力団へのばく然としかあこがれは根強い。組員のカッコよさのほか、「働かないで小遣いや背広をもらえ、力だけでのし上がれる世界が、行き場のない少年たちの魅力になっている」(警察当局)
 暴力団を根絶するうえでも、非行少年対策は最もゆるがせにできない問題。
(朝日新聞11.30夕刊)
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