昭和6年(1931)..〔小3がいじめ復讐 隆慶一郎『昭和六年のいじめられっ子』引用

1931年05月12日 (昭6)
小学校三年生のころ、私は今でいういじめられっ子だったと思う。昭和六年の昔だって、いじめられっ子はちゃんといた。(中略) 毎日しつこく絡む男の子がいて、まいった。見ぶるいする感じで、決闘するしかないと思った。だがけんかなんかしたことがないからやり方が分らない。(中略) 裸じめのかけ方を教えてくれた。今考えるとむちゃな青年である。(中略) 次の日、私はいじめっ子におずおずと決闘を申しこんだ。(中略) 裸じめが、がっちりかかった。(中略) おちて失神してしまった。私は彼を殺したと信じた。恐ろしくなってわあわあ泣いた。恐ろしかったのは罰ではなくて、人一人殺したという感覚だった。(中略) 弱い者はむちゃをするからこわいという思考だ。虫をこわがる者は残酷に殺す。相手が強ければわら人形に五寸くぎを打つ。

隆慶一郎『昭和六年のいじめられっ子』(『時代小説の愉しみ』収録)
感想・口コミ
出来事を検索する
検索するキーワード 表示結果
検索期間
日 ~
エリア
死者数
ジャンル指定