ふえる大学生の犯罪 知能暴力団の温床 警視庁で厳重摘発 未成年者あやつる 朝日新聞引用

1957年06月08日 (昭32)
京都府
 このところ大学生の人殺しや自動車強盗、脅し、たかりなどが目立ってきている。警視庁防犯部の調べでは、東京都内の昨年中の未成年学生の刑法犯は五千六百四十四人だったが、今年は四月末までに、すでに二千五百人に達している。強盗17、婦女暴行13、放火7、傷害13、暴行57、おどし176、窃盗1842、すり36、横領8、詐欺9などとなっている。このような実情に、警視庁小杉刑事部長は「放っておくと知能的暴力団発生の温床となる」として厳重な摘発の方針を取るといっている。

刑事部捜査一課の凶悪犯台帳から最近の大学生の犯罪を拾って見ると、31年11月には国際短大生が殺した死体を寮の床下にかくし、同十二月二十日明治大学文学部演劇科四年生がタクシー運転手を殺し、今年になって二月十四日に明治大学生ら四人が共謀で自動車強盗をやっている。また四月九日には、日本大学芸術科四年生を親分格とする大学生のおどしグループ11人が、15万円の空手形を使った男から数回にわたり、約53万円をおどしとっていた事件も検挙された。
また五月十一日には、立教大学生と日本大学生の三人がビヤホールでけんかし、相手をビールビンでなぐり殺して四谷署に検挙された。犯行の動機は「金」というのが多いが「人を殺して金を盗るなどのことは、以前の学生にはなかったことだ」と当局はいう。この他未成年犯罪者のかげで糸をあやつるものも大学生に多く、防犯部少年課が今年になって補導した三つの大きな不良少年グループには全部成年者の大学生がうしろだてになっていた。

多すぎる学生目がとどかず
文部省稲田次官の話 大学生は物事の是非を判断できる大人なのだから校外生活の面ではまず誇りと責任を持ってもらいたい。学校当局としても学内秩序が保てればこと足れりという態度でなく学校同士で連絡し、学生自治会とも話合って校外活動で世間から非難されないようお互いの連絡、提携が必要だと思う。またこの裏には、文部省が許可した定員よりもはるかに上回る大定員の学生を収容する大学にも責任の一半はある。教育上からも補導上も十分手が回らないような大学に収容されている学生は危い環境にあるわけだ。

評論家 大宅壮一氏の話 学生の犯罪がふえている最大の原因は、大学の学生マスプロだ。定員のなん倍もの学生を入れるので、先生は生徒の顔も知らないというのが現状だ。このような状況ではほんとうの教育も出来ないし、情熱を持って勉強するという空気も薄れ、大量の学生の中には報ぜられているようなヤクザ的なことをする学生も出てくるわけだ。私の考えでは、現在のようなデパート経営的な学校経営がつづき、健全な青春のはけ口もないような社会ではこの種犯罪は当然ふえていくのではないだろうか。
(朝日新聞1957.6.8)
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